お知らせ

2025年 学長年頭挨拶

皆さま、明けましておめでとうございます。少し時間をいただいて、年頭の挨拶をいたします。

 まずは、昨年、教職員?学生の皆さん、あるいは地域の方々と一緒に取り組んできたことを振り返ってみたいと思います。もっとも、多くのことをやってきたので、この限られた時間ではごく一部しかお話できませんが、その背後や周りには、皆さんや皆さんの同僚が関わった様々な取組みの進展があったということに思いを致していただければ嬉しいです。後半では、今後に向けてどのようなことが大事かということも、少しお話をいたします。

【動画】琉球大学 2025年(R7) 学長年頭挨拶

1.昨年の主な取組み

医学部及び病院の西普天間キャンパス移転事業: まず、昨年の主な取組みは、なんといっても医学部及び病院の西普天間キャンパスへの移転事業です。振り返りますと、6年ばかりの様々な準備を経てちょうど4年弱前に工事が始まり、最終ラウンドの昨年が山場でした。
 ここに業務が集中するのは分かっていましたので、大学としても上原キャンパス事務部の仕事を応援するということで、千原キャンパスから多くのメンバーにサポートに入ってもらいました。膨大な業務がありましたが、おかげさまで、それらの作業もほぼ予定どおり遂行できたと思っております。

 新病院は、12月のクリスマス直前に内覧会を行いました。想定よりも多くの方が来てくださった。これは関心が高いということの表れで喜ぶべきことかと思います。そして一昨日、入院患者さんの搬送を無事終え、まさに本日、先ほど開業したところです。速やかに活動が再展開できることを期待しています。
 医学部は、本年4月1日つまり来年度の初めから、新キャンパスでの活動を開始することになっております。

大学の組織や業務体制の改善?強化: 主な取組みとしてさらに挙げたいのは、先を見据えて、大学の組織?業務体制の改善強化を図ってきたことです。次のスライドの一番上に挙げたのは、ずいぶん地味で、そんなことあったかなと思われる方もいるかもしれませんが、BCP(Business Continuity Plan;事業継続計画)を初めて策定いたしました。まずは大地震を想定したものとしましたが、引き続き、感染の大型流行が起こった場合を想定したもの等も順次策定していくことになります。

 教員の裁量労働制を今年度の初めから実施をしました。またRX推進の一環として学生証のデジタル化を開始しました。学生との懇談会で、スマートフォンアプリとしての学生証の利便性はどうですかと感想を聞いたら、すごくいいですよと返答がありました。スマートフォン内に入っていることで自動的に常時携帯となるところに、一番のメリットがあるようです。今後、プッシュ型の機能もどんどん増やす予定で、安否確認等も今までと全く違うスピードと範囲でできるようになると考えて期待しています。
 それから、このスライドの最後のパートのところに記した統合IDシステムの導入ですが、それを決定し運用の準備を開始しております。後でまた述べますけれども、今後に向けて非常に重要な一歩が踏み出せました。

大学機関別認証評価の適合認定: 昨年には、大学機関別認証評価の適合認定を得られました。皆さんの活動がしっかりと評価されて認定を受けたということです。

SDGs推進本部の設置: SDGs推進室を推進本部に強化?拡大して取り組みを進めています。THE大学インパクトランキング2024でも、国際的に高い評価を維持できているということも確認をしておきたいと思います。

種々の人材育成プロジェクトの開始: 様々な人材育成プロジェクトを、NIADやJSTなどからのプログラム採択を受けて開始をしています。

 大学院理工学研究科の取り組みで、高度IT人材育成の強化プロジェクトが採択になりました。10年をかけて進めていくことになります。さらに、学部教育?大学院教育より少し幅を広げた活動が「STELLA」で展開できています。

企業や自治体との連携の強化: 企業や自治体との連携の強化の面でも、種々の展開ができました。

 このスライドでは三つ挙げています。沖縄健康医療拠点を核とした健康まちづくりの実現を目指して、宜野湾市および沖縄セルラー電話株式会社との連携協定を結びました(右上の写真)。また、脱炭素社会の実現に向けて、日産自動車?琉球日産と連携協定を結びました(二つ目の写真)。
 さらに、デジタル人材の育成に基づいて労働生産性の向上を図ることを目的に、沖縄総合事務局、沖縄県、沖縄県経済団体等の13機関との連携協定を12月に結びました。このスライドには写真は載せておりませんが(四つ先のスライドに掲載)、これも今後に向けた非常に大きな一歩だと思っています。様々な機関の方も、こういう取組みは初めてだということで期待感を語っていただいております。

地域貢献活動強化に向けて表彰制度を創設: 本学には、ずいぶん前から「プロフェッサーオブザイヤー」表彰がありますが、教育活動分野のものです。一方、地域貢献大学を標榜しているのに、地域貢献活動の表彰というのがなかった。地域貢献活動も、もう少し見える化してよいのではないかと思い、地域貢献活動の表彰制度を創設いたしました。

そして昨年、第1回表彰式を実施しました。その時の様子がこのスライドの写真に示されています。第1回の表彰というだけあって、長年取り組んでこられた方が表彰されています。継続して、地域貢献の取組みとその成果を皆さんと共有できるようにしていければと思います。

グローバル化を推進する取組み: グローバル化を推進する取組みも、昨年いろいろと進みました。

 「大学の世界展開力強化事業」は、素晴らしいことに続けて採択を受けて活動しています。夏にはこの事業のサマープログラムを、大学独自にやっているサマープログラムと合同で同時開催して、多様な学生の国際共修を実現することができました。
 また、本学とハワイとの連携をますます強めようということで、新たな顧問を3名に委嘱をしました。ハワイ大学との連携も、ラスナー総長と学長総長同士の相互訪問を実現し、さらに深めることができました。

2. 今後の課題?取組み

安定した財政基盤の構築: 今後の課題、取組みですが、まずは安定した財政基盤の構築が何よりも大事だということです。これは皆さんと共有できていることであると思いますが、改めて掲げております。

 昨今の電気代高騰を含む物価高や人件費の上昇がある一方、運営費交付金の方はなかなか期待する予算額は難しい。日本の経済の状況を考えると、将来的にも難しいであろうと思います。皆さんには、昨年も、電気代等諸経費の節減をはじめとする自助努力をしていただいたところです。全国の国立大学が苦しんでおりますが、特に私たちがより苦しいのは、最初に申したキャンパス移転がまさに進行中であるというところにあります。移転には経済的な努力も大学自身でしながら完結させないといけないという面があります。さらに、病院は移転という一大イベントを挟んで、大なり小なりペースダウンをしなければならなかったわけで、当然、一時的な収入ダウンになります。
そういう厳しさの中にありますが、少し長い目でみてこの事態を乗り越えていくことが大切です。琉球大学病院は、地域の人々の健康を守る最後の砦であり、医療の高度化を促進する先進医療の拠点です。これらの機能を強化することは、本学の価値を高めることでもあることを見据えて、全学的に努力を重ねていく必要があります。

地域?社会との連携のさらなる促進: 今後の取組みとして、地域?社会との連携のさらなる促進ということも大事です。

 まず、研究支援、産学官連携推進、地域貢献をより強化するために、研究推進機構と地域連携推進機構を統合して「研究?普及機構」(仮称)を創設し、より統合的に活動を強化していくという構想を立て、概算要求しています。年末に伝わった情報では、この要求は認められたようです。地域?社会との連携というのは、最終的に長い目で見ると、私たちの活動が地域社会に支えられる道を拓きます。つまり、先に述べた財政的な基盤の構築というところでも大事になってくることですので、実行に移すせることが楽しみです。
 地域とともに人材育成?リスキリングなどの課題に取り組むための「デジタルスキリング協働推進ラボラトリー」(略してDラボ)の設立も大きな成果です。協力協定を結んだ13機関との連携を基盤に、活動を地域へと拡げていくことになります。ここで協定締結式の様子の写真を載せました。本学を含めた14機関の代表が、協定書を提示しているところで、諸機関から期待の言葉が述べられています。

RXの推進による仕事と働き方の改善: 今後の重要課題?取組みの3つ目はRXの推進です。これによって、ぜひ仕事の機能的改善と働き方の改善をさらに進めていっていただきたいと思っております。

 先にも触れましたが、現在、統合IDシステムの導入を準備中です。事務の皆さまはよくご存知でしょうが、現在、本学では個々の分野ごとに別の電子的データ処理システムが存在します。これらを安全につないでいくことによって、業務の効率化を図ることも睨んでの取組みです。個々のシステムは更新の年度が違うので、この大事業の完成には少し年数がかかりますが、目標をしっかり見据えて取組みを進めていただければと思います。
 この取組みで同じようなデータを何回も入力するということが減るので、働き方の改革?改善につながります。またデータをしっかりと一元管理することによって必要な分析がより強力にできるようになるので、データ駆動型の経営施策の策定にもつながっていくと考えています。

3. おわりに:人の育成こそ大学の最大の使命

 最後に、大学の基本について一言述べます。大学とはどういうところかと改めて考えると、なんといっても「人の育成こそ大学の最大の使命」というところに行き着きます。高等教育機関ですので当然です。では、そのためにどういうことをするのかというと、大きく二つの機能があります。①と②です。

 ①は、社会の機関として、特に我々は国立大学ですから、運営費交付金、つまり税金が運営のベースですので、社会が必要としている「人材」を育てる場だということです。この役割はしっかりと果たさないといけない。
 それと同時に、②に記したように、この世に生まれてきた若者に(さらに若者だけではないもっと広範な人々に)幸せに生きていける力を身につけてもらう。つまり、必ずしも人?材?育成を目指すというのでなく、人々が生きる力を身につける場、あるいは知的喜びを感得する場でもあるということです。
 このように大学は、多様な人たちがそれぞれに合った目的とペースで学べる場であるべきでしょう。教育は、決して一つの物差しで測るようなものではありません。
 いま私たち大学人が直面している困難の一つは、これら二つの側面が相容れないように見えるところにあるように思えます。しかし大学は、この相容れなさを高い次元で止揚する場でなくてはなりません。私たちは意識的に、そういう場であり続ける努力をし続けることが必要でしょう。その努力をぜひ一緒に続けていければと願って、私の年頭の挨拶にしたいと思います。

 最後のスライドの写真は、西表島で研究者?学生と鳥を観察しているところですが、未来を遠望していると見立てて示しました。この沖縄の地の大事な大学として、皆さんに喜んでもらえる良い活動を展開していきましょう。

 本年も皆さまにとって良い年でありますように。

2025年(令和7年)1月6日
琉球大学長 西田 睦

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