理工学研究科海洋環境学専攻出身の小林 大純さん(現 国立科学博物館)が第14回(令和5(2023)年度)の日本学術振興会育志賞を受賞しました。本学在籍者(出身者)の受賞は今回が初めてとなります。なお、授賞式は令和6年2月頃に明治記念館(東京都港区元赤坂2丁目2-23)において行われる予定です。
<日本学術振興会育志賞について>
「日本学術振興会 育志賞は、上皇陛下の天皇御即位20年に当たり、社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる若手研究者を支援?奨励するための事業の資として、平成21年に上皇陛下から御下賜金を賜りました。このような陛下のお気持ちを受けて、将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される優秀な大学院博士後期課程学生を顕彰することで、その勉学及び研究意欲を高め、若手研究者の養成を図ることを目的に平成22年度に創設したものです。対象者は、人文学、社会科学及び自然科学の全分野において、大学院における学業成績が優秀であり、豊かな人間性を備え、意欲的かつ主体的に勉学及び研究活動に取り組んでいる大学院博士後期課程学生としています。」(日本学術振興会育志賞HPより)
小林さんは、魚類の洞窟環境への適応や表現型進化の機構に関する研究を中心に、琉球大学在籍中に主著10本を含む30本の学術論文を公表しています。博士課程在籍時のメインテーマであるハゼ目魚類のテンジクカワアナゴの研究では、基礎的な形態学的/生態学的アプローチに留まらず、最先端のゲノミクスのアプローチを取り入れながら多角的に研究を展開してきました。その成果は、「回遊する洞窟魚」という従来の洞窟生物像を覆す興味深い発見として実を結びつつあります。国内外の学会で5件の発表賞を受賞していることからも、国際的に大きな注目を集める成果としての公表が期待されます。
小林さんは、これまでに琉球列島のほとんどの洞窟だけでなく、インドネシアをはじめとする世界各地のフィールド(11カ国)に自ら踏査して標本を収集してきました。また、これらの膨大な野外調査を通して、メインである洞窟魚の研究のかたわら、7種の新種と3種の日本新記録種を国内外の学術誌に発表しています。特に、2020年に発表したコモチサヨリ科で初となる完全に下顎の嘴が退化した新種は、魚類の摂餌形態の進化の研究における重要なモデルになると考えられています。さらに、2023年に発表した古代湖で同所的種分化を遂げた湖沼性メダカ属の分類学論文は、単なる新種の記載だけでなく、全ゲノム情報に基づく系統解析や野外観察データ、過去の研究史のレビューなどの膨大な情報を多角的に統合した精緻なものとして高く評価されています。
今回、これら数多くの実績に加え、意欲性や主体性などが認められての受賞となりました。
<小林 大純さんのコメント>
この度の育志賞の受賞は、琉球大学時代の皆様の暖かいご支援の賜物だと思っております。多くの方々に様々な機会で大変お世話になり、ありがとうございました。今後も賞に恥じぬように研究等頑張りたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
フィールドワークへ向かう小林 大純さん