本日、ここに、琉球大学の「令和4年度 学部卒業式ならびに大学院修了式」を挙行できることは、私どもの大きな慶びとするところです。学部卒業生ならびに大学院修了生の皆さん、卒業?修了、まことにおめでとうございます。琉球大学の在学生および教職員を代表して、皆さんの卒業ならびに修了を心から祝福いたします。
新型コロナウイルスへの注意がまだ必要な中、卒業生?修了生のご家族、同窓生の皆様、またご来賓の皆様などをこの場にお招きできないことはたいへん残念ですが、この式はインターネットで中継しています。ご家族?関係者の皆様には、これまで卒業生?修了生を物心ともに支えてくださったことに感謝するとともに、めでたくこの日を迎えられたことを心からお喜び申し上げます。
今回、卒業?修了を許可されたのは、学部学生1,406名、大学院学生245名、総計1,651名です。皆さんは、修学期間の大部分を新型コロナウイルス感染症拡大の影響下で過ごさざるを得ませんでした。そのような中で、本学は皆さんの勉学や研究が少しでもはかどるよう様々な努力をしましたが、何よりも皆さん自身がそれぞれ工夫と努力を重ねて今日の日を迎えられました。
その上でお伝えしたいことは、皆さん自身の努力に加え、ご家族や身近な方々の長年にわたる支援があってこそ、今日という日を迎えることができたということです。さらに、コロナ禍に苦しむ皆さんへ、県内外の様々な企業?団体や個人からの暖かいご支援がありました。ここに改めて、支援の手を差し伸べてくださった方々にお礼を申し上げるとともに、卒業生?修了生の皆さんには、今一度、このことに思いを致してほしいと思います。これらの支援をしてくださった方々は、卒業生?修了生の皆さんのこれからの活躍へも声援を送ってくださっていること、間違いありません。
さて、これから皆さんが飛び立つ社会、そして時代はどのようなものでしょうか。それは、一言で言えば「社会が様々な課題を抱えつつ、ICTの目覚ましい発展のもとに急速に変化する時代」だと私は考えています。とくに今年は、AI(人工知能)を人類社会が本格的かつ意識的に使用し始める時代の幕開けの年になるのではないかと思います。
昨年の11月末、ChatGPTと呼ばれる会話型の大規模言語モデルによる生成AI(ジェネレーティブAI)が公開されました。「会話型」というところが大きなポイントです。プログラミング言語などではなく、人々が日常的に使用している自然言語でAIに作業を命じたり、その結果を確認したりすることができるため、誰もが容易に利用できます。このこともあって大きな話題を呼び、たった2か月の間に世界で1億人以上が利用登録をしたようです。そして先週の3月15日には、機能が大幅に向上した新バージョンが公開されました。米国でこれにUBE(米国統一司法試験)やLSAT(ロースクール入学試験)などを解かせると、十分に合格できる点を取ったとのことです。
このように高機能になったAIを、Microsoft社は自社の提供するクラウド上のアプリケーションソフトウェアシステムに組み込みつつあります。またGoogle社も独自に開発したAIを用いて同様の取組を進めています。このような動きを見ると、仕事のあり方は急速に変わっていくものと考えられます。いくつかのリスクも考えられますが、AIを活用して仕事の効率を上げる人や組織が増えると、これを活用しないという選択をすることは難しくなります。そうだとすれば、AIにできることはAIにさせ、人間は人間にしかできないことをするべきだということになります。
そこで大事になるのは、AIをうまく使うスキルと知恵、そしてその基礎となる自ら考えようとするマインドセットと倫理観です。AIのアウトプットは間違いを含んでいることもあるため、人間が情報の「原典」に当たって根拠を確認し、その上で責任をもって最終判断を下すことが求められます。皆さんは本学での学びの中で、課題を適切に設定し、その解決に向けて取り組む力を身に付けているはずです。原典や原著論文に当たるということは、文系、理系を問わず、皆さんが学問を学んできたときに大切にした基本姿勢であったはずです。そして、他者と議論をして考えを磨くことも体験的に学んでいます。急速な変革期にある今の時代は、これまでの学びを基礎にして、新たな状況に柔軟に対応できる若い皆さんが活躍できる、いや活躍すべき時代です。社会からの皆さんへの期待は大きなものがあります。ぜひその期待に応えてください。本学での学びの成果を、急速に変化するこれからの社会で積極的に生かしてくれることを願って止みません。
琉球大学は、地域に貢献する大学、世界との懸け橋になる大学として、その活動をさらに活発に行っていきます。皆さん、今後は同窓生として本学を力強く支援していただければと思います。また学び直しに母校を積極的に活用してください。いつでも歓迎いたします。
本学はこれまでに約9万名の卒業生?修了生を、沖縄をはじめ日本各地に、そして世界に送り出してきました。各地で活躍するそうした先輩たちの中に、皆さんが新たに加わることをたいへん心強く思っています。令和4年度卒業生?大学院修了生の皆さんが、今後、大いに健闘されること、そして一人ひとりの人生が幸せの多いものになることを心から願って、私からのお祝いの言葉といたします。
令和5年3月23日 |