<発表のポイント> ◆経緯 ◆社会的意義/将来の展望
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<発表概要>
血液悪性腫瘍は血液のがんであり、代表的な疾患としてリンパ腫や白血病などがあります。進行が早く、合併症などから生命の維持に直結することが多いためできるだけ早く診断し、治療を開始する必要がある疾患です。検査や治療に関しては専門性が高く、専門医による対応が必要です。今回、これまでに例のない海外から血液悪性腫瘍疑いで重症患者を受け入れ、診断確定し、治療につなげることができました。
経緯:令和4年7月、突然、インドネシアのスルヤフサダ病院から当科へ直接、国際電話がありました。インドネシア在住で県出身の女性が、5月より発熱、肺炎などの感染症、皮疹を繰り返しており、原因不明のまま全身状態も衰弱しているため、精査加療の目的で地元の沖縄の病院で受け入れることは可能かという相談内容でした。すでに沖縄の複数の医療機関へ連絡しているが新型コロナウイルス感染拡大に伴い、診療制限があり、受け入れを断られている状況のようでした。スルヤフサダ病院の血液内科医師によると、血液悪性腫瘍の疑いがあり、感染症も合併しているが同院においてこれ以上の精査はできない、酸素投与も必要な状態であり、飛行機での移動が可能なうちに早めに転院させたいとの依頼でした。この患者は発症から数ヶ月が経過しており、送られてきた血液検査データ及びカルテ情報から、全身状態が悪化した寝たきり状態で呼吸状態も悪く、命にかかわる状況であり、一刻も早く診断?治療が必要と考えられました。
琉球大学病院での対応:本院でも初めてのことでしたが、各部署との連携により対応しました。医事課と地域?国際医療部の国際医療支援室は緊急ビザの発行手続きを行い、地域連携室は空港から病院までの緊急搬送の手配についてのアドバイスを行い、感染対策室は予想される感染症(コロナウイルス、結核、チフス、抗菌薬耐性菌など)について対策しました。スルヤフサダ病院の医療コーディネーターの方による緊急搬送用の飛行機の手配も含めて、たくさんの方との連携?協力により、空路から陸路まで全身状態も悪化することなく、円滑に琉球大学病院まで搬送し、入院することができました。
インドネシアの医療事情と搬送の背景:全体的な医療水準はあまり高くないようで、地域格差があるようです。日本人を含めた外国人が利用する私立病院は、近代的な施設も整っており、安心して受診ができるようですが、保険の問題もあり、疾患によっては十分な検査や治療ができないまま退院となることもあるようです。重症の場合は、より医療水準の高いシンガポールや日本に緊急移送となることもあるようですが、今回は患者さんが沖縄県出身であり、ご本人自身がご兄弟のいる沖縄での精査加療を希望されたことで、当院への搬送となりました。
今後の方針:今回の搬送は県出身の方でもあり、関係部署の連携により受け入れも円滑でした。これを先駆けに、琉球大学病院がアジアの医療拠点として、急を要する専門的な精査?加療が必要となった際にはタイミングを逸することなく、地域貢献にとどまらずに国境を超えた国際貢献として、最適な医療を提供することができるよう今後も尽力いたします。