有限会社マイテックと琉球大学は、量子結晶を用いたプラズモン増強効果により新型コロナウイルスを2分で可視化する新規検査法を共同開発しました。 患者検体を用いた臨床性能評価ではPCR法との陽性一致率は72~94%であり、高い診断性能が示されました。現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断方法としてPCR検査が標準的となっていますが、手技が煩雑で時間を要し十分に普及しているとは言えません。今回開発の検査法は簡便かつ迅速に検査できることから、本手法の普及によりCOVID-19の早期診断と迅速な感染対策が可能となり、感染拡大防止への効果が期待できます。今後、更なる検査精度向上のための最適化や、より大規模な臨床性能評価、そして自動検査機器の開発を行う予定です。 |
【発表の概要】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは変異ウイルスの出現によって収束が見通せない状況であり、2021年3月8日現在、世界の死者数は260万人を突破し、日本の累計感染者数は約44万人で、すでに8000人以上の方が命を落としています。
COVID-19の感染拡大を防ぐためには、COVID-19患者をいち早く診断して隔離することが重要であり、そのためにはいつでも簡単に検査を受けることができるような検査体制を構築することが肝となります。現在、COVID-19診断は主にPCR検査が利用されていますが、PCR検査はウイルス遺伝子を増幅して検出するため、手技が煩雑で結果を得るまでに数時間(通常、1~4時間)かかります。また、迅速抗原検査はどこでも簡単に検査できますが、PCR検査と比較すると感度が低く一度に大量の検査はできません。このような現状から、迅速、簡便、高感度で、かつ一度に大量の検査ができる検査方法があれば理想的です。
有限会社マイテック(代表取締役?長谷川幸子、以下「マイテック」)は、バイオチップ(プロテオ?)表面に1分で金属錯体の結晶(量子結晶)を固相化させる特許技術を有しており、この技術を応用し、1滴の血液でがんを早期診断する新しい検査法を確立しています。
今回、上記の技術をCOVID-19の診断に応用する研究開発を、琉球大学大学院医学研究科 感染症?呼吸器?消化器内科学の金城武士助教の研究チームとマイテックが共同で行いました。その結果、新型コロナウイルスを簡便な操作によって2分で可視化できる検査法の技術を確立し、沖縄県のCOVID-19患者から採取した臨床検体を用いた検討により、その高い診断性能を示すことができました。この新しい検査手法を我々はCV(Coronavirus Visualization)検査と命名しましたが、CV検査では検査時間を大幅に短縮できることだけでなく、測定前の工程が2ステップと簡便で、かつ迅速抗原検査では検出できないような低ウイルス量の検体でも定量的にカウントすることができました。
CV検査は、医療の現場だけでなく空港の検疫所や大規模イベントなど、短時間に多くの人が来場?通過する場所においても、簡単?確実に感染者の特定ができるため、研究チームでは全自動検査機器の開発などを積極的に進めていく予定です。また更なる検査精度向上のための最適化や、より大規模な臨床性能評価も行う予定です。
尚、このプレスリリースは査読を経ていないプレプリント段階でのプレスリリースであり、今後、内容が修正される可能性があります。COVID-19パンデミックに鑑み、研究成果をいち早く公表することが、公共の利益に値すると判断いたしました。
【用語解説】
CV(Coronavirus Visualization)検査
プロテオ?バイオチップ上の固相化した抗体に特異的に抗原を結合させ、抗原に付けた蛍光物質の光を直接観察することができる検査法です。
プロテオ?
蛋白質等を特異的に検出するバイオチップの登録商標です。
新規物質の「量子結晶」「過酸化銀メソ結晶」は、がん関連物質を選択的に吸着させることができます。また、特異的抗体を用いてウイルスや多くの疾病関連物質を短時間で検出することができます。パイオニア発明として「量子結晶」「過酸化銀メソ結晶」の物質特許が世界中で認められています。
世界知的所有権機関(WIPO) 公開番号 |
各国での特許番号 |
WO2012033097 |
EU EP2615059, 米国09139907, |
WO2013065747 |
日本6196159 |
WO2015170711 |
米国10215700, 中国106461556, 日本6492066 |
量子結晶
マイテックが世界で初めて開発に成功した新たな概念の新規プラズモン物質です。プラズモン物質は蛍光物質の光を増強する特徴を持っています。また、量子結晶は通常12時間以上かかる金属錯体の固相化を1分に短縮する事ができます。